ダンボネット・システムズ株式会社

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5.終焉期
2014(47歳)~現在

2014.08 – 2019.07
BMW 745i 2004

 免許は取り消しになってもすぐクルマに乗れなくなる訳ではありません。私の場合は、ベントレーの天井で走ってから7ヵ月以上経過した2011年6月から2年間の欠格期間となりました。18歳で免許を取ってから26年後に再び免許のない状態となりました。私の人生史上、劇的な出来事であることは間違いありませんが、それほどこの2年間は辛い期間ではありませんでした。それは私の価値観を強烈に支配している「」の存在でした。クルマの事故でバイクの免許も同時に粉々になりましたが、船の免許はもちろん無傷。マリーナの往復を電車でするのは確かにしんどいですが、船上では酒を飲むので、以前よりかなり厳しくなった飲酒運転の取り締まりを考えると、船とクルマの相性は悪く、結果、「」があればいいや、という考えに落ち着いていました。
 免許のない私にとって、クルマはもはや無用の長物。当然、クルマへの興味も途絶えます。毎回楽しみにしていたモーターショーにも行かなくなりました。そんな中、家用のC55も購入から9年が経過し、無理矢理チューンのクルマにはあちこちガタがくるようになっていました。
 そして、C55の4回目9年の車検での修理代の見積が大きかったため、これを機に知人のクルマ屋に下取りに出し別のクルマに買い換えすることにしました。クルマ熱の冷めた私が選んだのは、中古車、それもドイツ車の。妻が運転でき、そつなく動き、左ハンドルのクルマであれば何でもいい、という投げやりの判断でした。
 クルマ屋が提示した中に、BMWの7シリーズがありました。妻が運転するにはちょっと大きく、コラムATというのもひっかかりましたが、私の中にあるデカいクルマ好き、という部分が無意識のうち疼いたのか、即決でそれに決めました。
 総排気量4,398cc、自然吸気のV型8気筒DOHCエンジンから最大出力333psを発生。ボディ長5,030mm、車両総重量2トンという大型ボディを、最大45.9kgmのトルクによりスムースに操ります。そこら辺のチューニングはさすが7シリーズ。かつて所有していたベントレー・ターボRLのそれに近いどっしりとした安定感とスムースさがありました。もちろん、乗る度に私のドイツ車嫌いを確認する、どこを触ってもプラスチック・パーツばかりという空間であることは言うまでもありません。
 745iには、私の好きな無意味なギミックもいくつかありました。例えば、電動日よけ。フロントガラス以外の全てのガラスにスイッチ一つでせり上がってくる日よけが内蔵され、西日がきついときなどに威力を発揮しました。このせり上がりシステムはかなりチープな作りで、よくもまあ壊れずに動き続けているなと感心するほどでした。私をこの機構を網戸と呼んで気に入って使ってました。
 私は、クルマにはナビやオーディオ、TV等も最新で最高のものを求める傾向がありましたが、自分のクルマではない745iにそれを求めませんでした。年式がちょうどワンセグに対応していなかったため、TVはなし、スマホ連携もないナビには、遙か昔の地図しか表示されませんでした。昔のようにDIN汎用サイズのナビなら最新の市販品に替えたと思いますが、組み込み型のメーカーナビを高い金を払って替える気にはなりませんでした。
 堕落したクルマ人生には、助手席に乗ってちょうど良い乗り心地に「クルマはこんなもんでいいんだよ」という過去の私が聞いたら跳び蹴りされそうな理屈をこねるクルマ好きからはほど遠い人間になっていました。

2019.07 – 現所有
MERCEDES BENTZ C350 AVANT-GARDE AMG SPORTS PACKAGE PLUS 2013

 2年の欠格期間が明けた翌月の2013年7月、法定の2日間の取消処分者講習に行きました。この取消処分者講習、私にとって辛い2日間でした。私はまだ自爆事故なので、のんびりしたものですが、他の受講者の中には、人身事故を起こしてしまった人もいます。どうして、そのような事故(違反)を起こしてしまったのかについて、皆の前で発表する時間があるのですが、その生々しさといったら、免許更新の際に見させられるエグいビデオの比ではありません。
 取消処分者講習が終わると終了証の交付を受けますが、この終了証には有効期限があって、それが1年。この間に再度免許を取らないと、取消処分者講習をもう一度受けなければならないという、免許を取らせたくない意図見え見えの仕掛となっています。
 それでも私はすぐに免許を取りに行く気になりませんでした。一発免許を受けるのもどうせ何度か落とされるんだろう、という面倒くささと、教習所にもう一度行くとなれば、数ヵ月間10代の若者に交じってまた朝一のキャンセル待ちに並ばなければならないのか、という面倒くささで、ズルズルと日が経過していきました。
 そして、間もなく終了証の期限が切れるという2014年の7月、とりあえず首を繋ぐためだけに、学科テストだけで気軽に取れる原付の免許を取得します。18歳の誕生日が来る日を数えて、免許そしてクルマに憧れたあの頃とはまったく違う自分になっていました。その原付免許も、身分証明書としてしか使用しないまま、免許取得3年後の2017年3月、うっかり失効して、人生2度目の免許を失うという事態に陥ります。
 免許のない私ですから、クルマの買い換え時期も長くなります。745iを5年乗った車検の際、重度のオイル漏れが発覚し、3桁クラスの修理見積が届いたことをきっかけに、クルマの買い換えを決断します。
 知人のクルマ屋からの提案で決めたのは、またもやベンツ。ドイツ車です。それも、C32やC55のような個性丸出しのクルマではなく、普通のベンツに毛が生えた程度のC350です。
 総排気量3,497cc、V型6気筒DOHCの自然吸気エンジンは、最大出力306psを発生。かつて所有したC32やC55と比べると見劣りはしますが、家族用のクルマとしては必要にして十分。この頃の年式のクルマとなると、ワンセグTV、Bluetoothによるオーディオ&電話接続など、マルチメディア系はほぼ現在と同じレベルまで成熟しているため、年式から10年以上経過しても不自由はしません。オートクルーズもディストロニック・プラスとなり、レーダーセンサーにより先行車を認識して、速度に応じて車間距離を適切にキープしたり、クルマに必要な装備は一通り揃った感じです。
 C350を購入した年の暮れから翌年2020年にかけて、私たちの生活が一変するとんでもない事態が起こります。新型コロナウイルス感染症の爆発的なまん延です。この手の出来事があると、大小さまざまな「よーいドン」が発生します。大きなよーいドンの例としては、ワクチン開発でしょう。これは大きな会社にやってもらうとして、私のようなベンチャー企業に大切なのが「小さなよーいドン」です。今までなかったことが世の中で起こると、それに対応するための何らかのビジネスチャンスが生まれます。いずれ大手が参入してくるかも知れませんが、ベンチャー得意のスピード感でほんの少しでもリードする。これが、ベンチャーの活路です。私はコロナ対応でサーモグラフィーカメラ事業を立ちあげることにしました。本当は今まで通り堕落した生活のままでもよかったのですが、この「よーいドン」に対する反応は、体に刷り込まれていたベンチャー気質による無条件反射だったのかも知れません。

2022.08 – 現所有
LOTUS EVORA GT410 2021

 きっかけは、クルマ好きの友人が遊びに来た事でした。「どの教習所にも金を積めば最短で免許が取れるコースがある」この一言で教習所を検索、最寄りの日の丸自動車学校にもそんな大人の大立者コースがあることを知ります。私は友人に押されその場で入所をネットから申し込み、2022年6月、人生2度目の教習所に通い始めます。
 大人の大立者コースは、AT限定の学科26時間、技能31時間、2回の検定と効果測定、仮免学科試験の計62時間を、入所日にすべて予約してしまうというもの。最大で1日7時限、卒業まで29日という強行プラン。一分の隙もない予約のため、病欠や仕事で1時限でも休んだり、補習を受けたり、検定に落ちたりすれば、その日以降の予約はすべてパー。一括予約の権利も失い、若者と一緒に朝一のキャンセル待ちをしなければならなくなるというかなりの大人の大立者コースです。
 私はこの大人の大立者コースを29日で無事卒業。人生2度目の普通免許を2022年7月に取得します。免許を失ってから11年が経過していました。免許を取り直すことについては、入所当初は、旅行で妻ばかりに運転させていることへの後ろめたさが大半を占めていましたが、教習所に通ううちに、またクルマを乗り回したい、というものがムクムクと大きくなっていきました。
 晴れあるクルマ人生第二幕の記念すべき一号車は何にすべきか。私は考えます。ネットで検索しまくり、失っていたクルマの情報をかき集めました。なにせ、交差点で自動的にアイドル・ストップしたり、ギアをバックに入れると後部のカメラ映像が表示されたりする最近のクルマを知らない私ですから、そのギャップはかなりのものでした。
 今回、予算はあまり大きくしないつもりでいました。それは、前述の通り「」の支配が強烈で、以前ほどクルマの出番はないのではないか、というのが第一、また、悪魔の実、ベントレーも2024年にはエンジンの製造を終えると発表しているEV化の流れの中で、今、高額なクルマを選んでも金額的に元が取れるのか、という考えが第二にありました。
 結局、私が選んだクルマは、ベントレー、アストンマーチンと同じ英国車、ロータス・エヴォーラGT410でした。クルマ人生第一幕のトレノと同じ、右ハンドル、フロアMTです。今更、マニュアル車なのかと言われそうですが、EV化、自動運転化が進む今だからこそ、最後にクルマ臭いクルマに乗っておきたいという気持ちが強くありました。私は、教習所を卒業した翌日に運転免許試験場に行き免許をゲットすると、その足で教習所に戻り、AT車限定解除の入所申込をし、さらにその足で、ロータスのショールームにエヴォーラを見に行くという、かつてのクルマ好き絶頂期のようなエネルギッシュな行動をしました。さらに、AT車限定解除の規定4時限の技能を2日で完了し、卒検→運転免許試験場で免許証の裏書きを1日でこなすスタートダッシュで私のクルマ人生第二幕は幕を開けました。
 レクサスなどに使われているトヨタ製2GR-FE型V6エンジンに、米国エーデルブロック社製スーパーチャージャーを組み込み、排気量3,456ccから最大出力416ps、最大トルク42.8kgmを発生。ロータスとしては比較的重めではありながら、それでもアルミモノコック1,375Kgの軽量ボディを、0→100mを4.2秒、最高速度305Km/hまで引っ張ります。
 エヴォーラはロータスの過去の重厚長大路線での失敗もありながら、進む上級志向への対応のため、結果中途半端なライトウェイト・スポーツとなっています。快適装備は普通のクルマと同程度を実装していますが、ロータス流の軽量化はエヴォーラでも見られ、エアコンは温度設定なしの昔なつかしHOTからCOOLまでのボリューム調整型、シートの前後調整は電動ではなく実家のライトバンと同じ股ぐらの鉄棒を持ち上げ尻を自分で動かすタイプ。サンバイザーに鏡はなく、ミッドシップレイアウトでありながら、ボンネットは開かず前方トランクなしというびっくり設計です。
 乗り心地は、エリーゼやロータスSに比べ格段に向上したと豪語する割には、相変わらずサスの固さはまるで荷物を運ぶ台車に乗っている感じで、高速道路のつなぎ目で普通にコーヒーがこぼれます。ロードノイズも高級スポーツカーには遠く及ばないゴーカートレベルで、長期ドライブは疲れます。
 エーデルブロック社製スーパーチャージャーは確かにエンジンパワーを驚異的に向上させていますが、その分パワーバンドは昔のツーストバイクのようにシビアで、いいように合わせれば音も加速も楽しいですが、ちょっと合わせるギアが高いと、アクセルを踏み込んでもボコボコストンと落ちそうになるほどです。
 エヴォーラも私のクルマ遍歴の例に漏れず、今時のクルマのくせに細かなトラブルが起こります。走行中エアバック警告灯が点いたり、ドアを開ける際にほんの少しだけ自動的に下がるはずのガラスが全開になったり。大きなトラブルではないものの、最新の年式でありながらトラブルが日常にあるクルマを好むのは私の宿命なのかも知れません。